You are my platinum.

Vol.126

2003.11

 sweater

旅行に行った時、
バカンスに行った時、
アウトドアで遊んでどろどろになっちゃった時、
そんな時のあの人の服が
少しずつ家に残っていく。
一緒に選んだ服や、私が選んだ服、簡単なプレゼントに渡した服・・。
そんな、見るたびにその背景を思い出す大事な服なのに、
気軽にあの人が着てかえってしまう。
着替えて勝手に着てかえってしまう。
そしてそれはもう戻ってこない。
あの人の日常の服に紛れてしまう。
あたしとの服が、
あの人の日常に吸い込まれて消えていく。
戻ってこない。

そして気づくと一枚もない。
あの時買った服も、あの時選んだ服も、あの時渡した服も・・。
それが凄く悲しくて、何時も何時も子供のように
「持って帰っちゃわないでよ!やだよ!」とごねた。
でも「また買えばいいさ」と笑って着て帰ってしまう。

違うの、また買えばいいのじゃなくて、
それは、あの時のあたしと貴方の服なの。

悲しくて寂しくて
一枚も無くなっちゃった引き出しを見てまた悲しくなる。

そんな時に、
寒いからって貸してくれたセーターを返すのを忘れた。
翌日合った時に「ごめん昨日返し忘れちゃった」と渡した。
でもその日もまた忘れていった。
ぽわんとたたんだセーターを眺めて
なんだかやっぱりこの人が好きだなぁと思う。

次の日、そのセーターを借りて着てみた。
着たまま街へ出かけた。
嬉しくて嬉しくて嬉しくてなんだかとても幸せで。
これがあれば、あの服もあの服もあの服も無くてもいいやって思った。

グレーの、
あの人が去年着ていたセーターを着て、
街をひとりで歩く。

Baker's dozen Jiu


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